2017年5月
文・高松徳雄

 

2017年5月7日に読書会を開催しました。課題図書は、夢野久作『氷の涯』

以前江戸川乱歩を取り上げ、4月にはポーの『黒猫』『アッシャー家の崩壊』を取り上げた繋がりもあり、“怪奇・幻想小説”というジャンル繋がりで夢野久作を選びました。彼の主著としては、やはり『ドグラ・マグラ』が上げられると思いますが、これはかなり長い作品のため、中編のこの作品『氷の涯』を選びました。

古本買取クラリスブックス 夢野久作

他にもいろいろな作品がある中で、なぜこの作品を選んだかといえば、私が昔読んだことがあり、とても面白かった記憶があったからです。細かい内容はすっかり忘れてしまっていましたが、美しく、どこか、退廃的な美を感じさせられ、なんとも幻想的な風景が淡い記憶として残っていました。

さて、今回皆さんの感想を聞くと、面白くなかったわけではないが、ちょっと腑に落ちない、、、いまいち、、、得るものが無い・・・などなど、マイナスの意見が多く、この作品を選んだ身としては残念だったのですが、ただ、私も今回の読書会に合わせて再読したのですが、確かに・・・少なくとも一番最初に読んだ時の感慨は得ることができませんでした。読書会ということもあり、改めてしっかりじっくり読んだのですが、それが逆に良くなかったのかも、と思いました。

この作品、勢いが一番重要なのかも。

主人公の遺書のような告白文の書き出しから始まるこの作品、そのまま真面目にしっかり追っておくと、どうも矛盾しているような箇所があるし、終盤になると、主人公の独白だったにもかかわらず、他者の視点が急に入り込み、小説としての基本的構造が崩れてしまっている感が否めない。視点がずれてしまって、それが修復されていない。つまり、読者がおいてけぼりにされているようで、主人公の視点、あるいは主人公が書いた遺書を受け取った友人の視点で読むのではなく、作者、夢野久作の視点で読み進めないといけないのではないか、ということになり、そうなると、なんでもあり、ということになってしまう。

昔読んだ時、私は数日で一気に読み上げた記憶があって、一気に読み進めると、細かいところは無視できて、ぐいぐい物語に引っ張られる、あるいは自ら引っ張っていく感じがして、思い返すと、ここにこの小説の醍醐味があるのではと思いました。氷の涯に徐々に向かっていく、どこか世紀末的感覚、滅びの美学などというようなものを感じることができました。
ただやはり、そうは言っても、どうしても取っ付きにくい人もいて、それは結局「相性」なのかもしれません。

古本買取クラリスブックス 夢野久作

私は最初からこの小説を恋愛小説、もっと言えば、純愛小説と捉えて読み進めたので、スパイや赤軍白軍の話は大した意味はないだろうと思っていました。(なぜ純愛小説と捉えたかと言えば、冒頭主人公と、一人の少女、あまり可愛くないらいいが、と、これから死に向かって行く様子が読み取れたからです)
そんな読み方をしたものだから、ぐいぐい一直線に突き進むことができたのかもしれません。

最初にも書いたように、今回の課題図書は、参加者の皆さんにとってはあまり好評ではなく、まあそういうこともあるから仕方ないと思いましたが(もちろん全員に不評だったのではなく、どちらかと言えば女性には好まれたかなと感じました。実際、私にこの作品を勧めてくれたのも女性でした)
否定的意見が多かったにもかかわらず、それでも、いろいろな装丁で再版され、昨年には国書刊行会から『定本 夢野久作全集』が出版されるなど、まだまだ読み継がれているということを考えると、そこには何か不思議な魅力が隠されているのではと思わざるを得ません。
取り上げた『氷の涯』という作品が、彼の作品の中では少し特殊だったかな、と反省しています。いかにも夢野久作らしい作品、『少女地獄』『犬神博士』『猟奇歌』そしてもちろん『ドグラ・マグラ』などがよかったかな、とも思いました。好きな人だけが集まる会などで、『ドグラ・マグラ』を取り上げるのも面白いかな、などと思いましたが、実現するかは謎です。

 

 

クラリスブックス 高松

 

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