2018年4月
文・高松徳雄

2018年4月1日の日曜日、当店にて読書会を開催いたしました。課題本はジャック・ロンドンの『野性の呼び声』、とても面白かったです。

そもそもこの作品を選んだのは、以前私が『火を熾す』を読んで大いに感動したからで、代表作であるこの『野性の呼び声』は、文庫本でよく見かけ、また、光文社の古典新訳シリーズでも出たので、入手しやすくなったということもあり、選んだのでした。

さて、今回の読書会も、実にいろいろな意見が飛び交い、とても有意義なものになりました。こんな感動したことはない、魂が震えた、などという、映画のコピーのような感想も出て、この作品を選んだ私としては、とてもうれしく思いました。もちろん、ちょっと私にはいまいち、、という意見も。また、作者ジャック・ロンドンと夏目漱石との類似性、冒険小説、ハードボイルド小説の先駆け、大人の童話、などという意見もありました。
私が皆さんの意見の中で特に興味深かったのは、バック率いる犬そりを実社会の仕事場や会社に置き換えて考えるところでした。老体に鞭打って自分の場所を動かずに頑固に頑張ってしまう犬、あまり役に立たないけれど、どんどん先頭に出てしまう犬などなど。自営業の小さな古本屋を営んでいる私などでは、正直思い当たらなかったことで、この犬そりという組織と、人間の会社という組織は、なるほど同一視できる要素がたくさんある、むしろ作者ジャック・ロンドンは、組織という枠組みに囚われた、人間社会のさまざまな問題点、矛盾をこの犬そりという、ごく小さな組織に埋め込んだのではと思いました。皆さんの指摘がなければ私にはわからないことでした。

 

▲光文社古典新訳版と、新潮文庫。私は新潮文庫版で読みましたが、どうやら新訳版の方が読みやすかったようでした。新しい訳が必ずしもすべて読みやすいとは思えないし、実際昔の訳が優れているものも多々ありますが、新しい方で読めばよかったかな〜とちょっと後悔。

淡々とした描写で、読者をぐいぐい世界に引き込むジャック・ロンドンの筆力はすばらしく、バック達と一緒に雪原を冒険している気分になりました。多少エンタメ性が強いかな、と思えなくもないのですが、読後感の清々しさは、最近読んだ小説の中では一番、ジャック・ロンドンの他の作品も読んでみたくなったのはもちろん、冒険小説という、私にとっては未知の領域にも足を踏み入れたくなりました。

クラリスブックス 高松

 

 

←いままでの読書会ページへ

←クラリスブックスの読書会ページトップ

  • Facebook
  • twitter
  • Hatena