2014年6月
文・石村光太郎

2014年6月8日、日曜日、クラリスブックス読書会が開催されました。今回で6回目を数えます。
本屋という立場で本を売るだけではなく、本、あるいは本屋を使って何かできないか。そんなスタッフ一同の思いを実現する一つとして始められた読書会ですが、今回は課題図書がカミュの「異邦人」というかなり定番の名作を取り上げたこともあるのでしょうが、初めて10人を超える人数の方にお集まりいただきました。当店がオープンして半年、読書会がやっと形になりかけてきたかなと思いました。今後も月1回のペースで継続していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

下北沢 古本屋 クラリスブックス 読書会 カミュ 異邦人

「異邦人」という作品は20世紀の文学が生んだ、代表的なキャラクターを主人公に持っています。今回の読書会の場でも主人公ムルソーの人物像についての語りに、時間が費やされてゆきました。一見すると無味乾燥で、感情を持たない、のっぺりとした人物に描かれている、ムルソーですが、読んだ者すべての心に何かしらのインパクトを与え、10人で語り合うと10通りのムルソー像が浮かびあがってくる感じで驚かされました。冷淡なのか、激烈なのか。子供っぽいのか、確固たるルールを持つ大人なのか。利己的なのか、人に優しいのか。反発をおぼえつつ、共感も得られる無数のムルソーが、語れば語るほど現れてきました。我々自身の中にもムルソーは潜んでいるのではないでしょうか。「『私』はムルソーなのか?」という問いが多かれ少なかれ皆の心に残ったかと思います。この作品が一人称で書かれた理由が見えた気がします。

下北沢 古本屋 クラリスブックス 読書会 カミュ 異邦人

「きょう、ママンが死んだ。」の有名な一説から始まり、一人称の簡潔な文章で、最後までそのリズムを崩さず、時代背景や風俗描写も最低限に抑えた普遍的でゆるぎない「異邦人」の世界は、今後も読み継がれ、語り続けられてゆくことでしょう。

「異邦人」は文庫本で150ページに満たない作品ですが、いくら時間があっても語りつくせぬ感じで読書会は終了となりました。
最後にひとつだけ、宿題のような謎が残りました。それは何故ムルソーが殺人を犯したとき、銃弾を一発撃った後に、少し間をおいて四発の銃弾を続けざまに撃ち込んだのか、ということです。皆の印象に残った重要な場面ではあったのですが、ふむふむと納得できるヒントらしきものも出ず、釈然とせぬまま時間切れとなりました。今後の読書会でまたいつか触れる機会があったら、語り合ってみたいと思います。

下北沢 古本屋 クラリスブックス 読書会 カミュ 異邦人

今回「異邦人」は新潮文庫、窪田啓作訳を全員読んできました。前回「罪と罰」とは違い、現在市販されているものはこの新潮社のものだけで、かなり古い訳なのですが読み易く、今も定番となっている名訳です。

下北沢 古本屋 クラリスブックス 読書会 カミュ 異邦人

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