2014年4月
文・石村光太郎

2014年4月6日の日曜日に読書会を開催しました。
課題図書は、山田宏一『恋の映画誌』。
クラリスブックスで開催する読書会は、これで4回目になります。

山田宏一恋の映画誌 クラリスブックス

『恋の映画誌』は毎日新聞に『ラブシーンのときめき』という題で連載されたエッセイをまとめたものです。50数本の映画を年代順に恋のシーンを中心に論じた構成になっています。

今回の課題図書が映画の本ということもあり、本から少し(かなり)脱線して、映画についての話で盛り上がりました。しかし最終的にはこの本に戻って、自分の好きな映画を文章で伝えるということ、言葉で表現するということ、この難しさ、そして楽しさといったことを皆で語り合いました。

クラリスブックス読書会山田宏一「恋の映画誌」

同じ映画でも、この本のように“恋”をキーワードとして観るか、“政治”をキーワードとして観るかによって、映画の捉え方が大きく異なるという意見が。
しかしこの本は映画を年代順に並べたことにより、例えば1963年にフランス映画「突然炎のごとく」とソビエト連邦の映画「一年の九日」という二本の映画が男二人と女一人の三角関係という同じテーマを扱っているという、資本主義と社会主義の東西緊張の時代には政治的な文脈の中に埋もれていた映画史的な偶然を浮かび上がらせます。“恋”を切り口にしていますが、作者自身が大好きな「突然炎のごとく」を脇役の位置におき、「一年の九日」を紹介することに、どんな意図が山田宏一さんにあったのかわかりませんが、私はこの本の懐の深さを感じました。

さてこの本に関してはもっと語りたいことがあったのですが、今回の読書会は当日に飛び入りの方も加わったということもあり、またあまりみなさん課題図書を読みきれていなかったということもあり、話はどんどん飛んでいきました。私は途中で本のことに戻ろうかとタイミングを伺っていたのですが、あまりにみんなの話が面白かったので、この会話のジャムセッションを楽しむことにしました。

「仕事の合間に、まるでミュージシャンがそれぞれ得意な楽器を持って集まり、即興的に演奏するジャムセッションさながらのたのしさにあふれた団欒のひとときがある。カメラマンとして取材にやってきたエルザ・マルティネスがピアノを弾き、それに応じて一家の道化役のレッド・バトンズがハーモニカを吹き、「スワニー河」をジャズっぽく、思いっきりたのしく演奏してみせる。仲間たちが取り巻く、一家の父親格のジョン・ウェインが笑顔でやさしく見守る。よそ者だった女性カメラマンはこうして一家になじんで仲間として迎えられる。
ハワード・ホークス監督ならではなごやかな宴の名場面だ。」

山田宏一さんが映画「ハタリ」について書かれた上の文章のような楽しい語らいの時間が続きました。映画「北のカナリア」の話から原案・原作の話へ、また映画「ピナ」からピナ・バウシュへ、そしてバレエの話へ。映画「アクト・オブ・キリング」から戦争犯罪へ、ナチ、アーレント、日本の戦争責任へと。歴史、文学、芸術、哲学、あるいはマンガへとセッションは続き、そしてアクション映画へと、話は映画に戻る。行ったり来たりのうちに夜は更けてゆきました。参加人数の少なさから時間が余ってしまうと懸念されていたのですが、盛況のうちにタイムオーバーとなりました。

課題図書をあげながら話が脱線しすぎかなという気もしますが、今回語られた言葉はやはり一冊の「恋の映画誌」という本から導かれ発せられたものだと思うし、アクティブな言葉のやり取りはこの本にふさわしい感じがします。

「恋は死に至る病」だから、派手なアクションはないけど、実はとてもドラマチック。

ドラマチックな一夜でした。

クラリスブックス読書会山田宏一「恋の映画誌」

クラリスブックス読書会山田宏一「恋の映画誌」ミクスチャーのパン

▲いつものように下北沢一番街にあるパン屋さんミクスチャーのパンを買ってきました。今回は人数が少なかったので、直接いろいろと選んで買ってきました。ミクスチャーのホームページはこちらです。

クラリスブックスの読書会は課題図書により、多少の違いはありますが、だいたい今回のような流れになるようです。もちろん課題図書を読んで来ていただくのが望ましいことですが、読まずに飛び入りで参加されても楽しんでいただけるかと思います。

 

クラリスブックス 石村

 

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